117C65

50歳の女性。発熱と強い動悸のため救急車で搬入された。
現病歴:6日前から咽頭痛と軽度の咳嗽が出現し、自宅近くの診療所で総合感冒薬の処方を受けた。3日前から発熱と前頸部痛が出現し、今朝から強い動悸も自覚したため娘が救急車を要請した。
既往歴:高血圧症でカルシウム拮抗薬を内服している。
生活歴:夫、大学生の娘と3人暮らし。喫煙は20歳から30歳まで10本/日。飲酒歴はない。
家族歴:父が高血圧症。
現 症:意識は清明。身長158cm、体重52kg。体温37.8℃。心拍数118/分、整。血圧134/74mmHg。呼吸数20/分。SpO2 98%(room air)。眼瞼結膜と眼球結膜とに異常を認めない。口腔内と咽頭とに異常を認めない。甲状腺はびまん性に腫大しており、左葉に圧痛を認める。頸部リンパ節の腫大や頸静脈怒張を認めない。心音と呼吸音とに異常を認めない。腹部は平坦、軟で、肝・脾を触知しない。四肢に浮腫を認めない。
検査所見:尿所見:蛋白(-)、糖(-)、潜血(-)。赤沈62mm/1時間。血液所見:赤血球362万、Hb 11.0g/dL、Ht 32%、白血球6,600、血小板18万。血液生化学所見:総蛋白7.2g/dL、アルブミン4.0g/dL、総ビリルビン0.8mg/dL、AST 44U/L、ALT 49U/L、LD 207U/L(基準120~245)、ALP 262U/L(基準38~113)、尿素窒素14mg/dL、クレアチニン0.8mg/dL、血糖98mg/dL、Na 141mEq/L、K 3.6mEq/L、Cl 104mEq/L、Ca 8.8mg/dL、TSH 0.08μU/mL(基準0.2~4.0)、FT3 9.82pg/mL(基準2.3~4.3)、FT4 3.92ng/dL(基準0.8~2.2)。免疫血清学所見:CRP 9.2mg/dL、抗TSH受容体抗体陰性。胸部エックス線写真で心拡大や肺血管影の増強はなく、胸水貯留を認めない。心電図は洞性頻脈でST-T変化を認めない。

治療として適切なのはどれか。3つ選べ

(a) 抗菌薬

(b) NSAID

(c) β遮断薬

(d) 抗甲状腺薬

(e) 副腎皮質ステロイド

正解:b,c,e

難易度:低

・前々問(117C63)より,亜急性甲状腺炎が考えられる.

・無治療でも数週間~数ヶ月の経過で自然治癒する.

✕(a)亜急性甲状腺炎はウイルス感染等により甲状腺組織が破壊され,貯蔵されていたホルモンが大量に血中に漏出することで一過性の甲状腺中毒症状を呈する疾患であるため,抗菌薬は無効である.急性化膿性甲状腺炎

では有用である.

◯(b)軽症例ではNSAIDsを用いる.

◯(c)甲状腺中毒症状に対してはβ遮断薬を用いる.

✕(d)禁忌.亜急性甲状腺炎は一過性の中毒症状であり,甲状腺機能は亢進しておらず,甲状腺機能低下症を惹起する可能性がある.

◯(e)炎症所見は強いときは副腎皮質ステロイドを用いる.

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