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84歳の女性。意識障害のため救急車で搬入された。一人暮らしだが、訪れた家族が布団に横たわり呼びかけに応じないのに気付き、救急車を要請した。意識レベルはJCS II-30。身長151cm、体重48kg。体温35.1℃。心拍数40/分、整。血圧88/40mmHg。呼吸数12/分。SpO2 92%(マスク5L/分 酸素投与下)。顔面は浮腫状で眉毛の脱失がある。甲状腺腫を触知する。下腿に非圧痕性の浮腫を認める。尿所見:蛋白+、糖(-)、潜血(-)。血液所見:Hb 7.2g/dL。血液生化学所見:総ビリルビン2.0mg/dL、AST 98U/L、ALT 86U/L、γ-GT 60U/L(基準8~50)、尿素窒素20mg/dL、クレアチニン1.14mg/dL、Na 128mEq/L、K 4.8mEq/L、Cl 98mEq/L、TSH 197μU/mL(基準0.2~4.0)、FT4 0.02ng/dL(基準0.8~2.2)。心電図で徐脈と四肢誘導での低電位を認める。胸部エックス線写真を別に示す。
この患者の検査所見として誤っているのはどれか。

(a) 抗TPO抗体陽性

(b) 血清総コレステロール高値

(c) TSH刺激性受容体抗体陽性

(d) 抗サイログロブリン抗体陽性

(e) 脳性ナトリウム利尿ペプチド〈BNP〉高値

正解:c(,e)

難易度:低

・低体温や下腿の非圧痕性浮腫,甲状腺腫瘍,高TSH血症,低FT4血症から,橋本病による原発性甲状腺機能低下症と診断できる.

◯(a)橋本病では,抗Tg抗体陽性,抗TPO抗体(または抗マイクロゾーム抗体)陽性,細胞診でリンパ球浸潤のずれかを認めて診断する.

◯(b)甲状腺機能低下症なので高コレステロール血症となる.

✕(c)TSH受容体抗体には刺激型と阻害型があるが,刺激型は受容体に結合するとcAMP増加により甲状腺機能が亢進する.バセドウ病で特徴的なものである.

◯(d)橋本病では,抗Tg抗体陽性,抗TPO抗体(または抗マイクロゾーム抗体)陽性,細胞診でリンパ球浸潤のずれかを認めて診断する.

✕(e)BNP≧100のときには心不全や甲状腺機能亢進症が疑われる.本症例は甲状腺機能低下症なので(e)も解答になるが,厚生労働省の解答は(c)のみであった.

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